なんちゃってチャリダー自転車始末記

伏し浮き、蹴伸び、バタ足から・・・

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 メッセンジャーデビューして13か月・・・。月日の流れは早いものです。わずか13か月、されど13か月。デビュー当初は1年以上も続けるとは思いませんでした。

 なんだかんだいいながらもやってよかったと思うし、(都内の道路を探索するという本来の目的を忘れそうになるくらい)非常に思い入れのある仕事でした。しかも「よーし、そろそろヤメルか?もう終盤だ」と思ってから、またまた何か月も経ってしまった。

 しかしな・・・「ああたのしかった」だけで終わるわけにはいかないあたりがリクツっぽいメッセンジャーのひねくれたところで。というわけで、メッセンジャー生活総まとめ、いきます。
 まずは動かしがたい客観的な状況から。もう何度も書いてきた内容です。

●凡人メッセンジャーの場合、報酬はフリーターとあんまり変わりないけどいい?
●つまり東京で一人暮らしはできるといっても、フリーターと同じ生活水準なんだけれど、いい?
●夜7時までとかいっても、7時までに入った注文は最後まで届けてもらうけどいい?
●その最後の配達が終わって、本部に戻って、売上を計算して伝票を整理している時間については給料出ないけどいい?
●つまり「拘束時間」に対する実質時給は表面上の時給より1割ほど安くなるけどいい?
●指導者やエースにならない場合、永遠に推定平均年収100万円台(地方)〜200万円台(東京)だけどいい?
●繁忙期と閑散期では稼ぎがかなりちがうけれどいい?
●特にまったくの未経験者で仕事の呑み込みも悪いと、10時間×週5でも月収15万円ぐらいだけどいい?
●携帯電話代は自己負担だけどいい?
●電車通勤でも交通費はまったく(あるいは一部しか)出ないけどいい?
●自転車関係の消耗品はすべて自己負担だけどいい?
●仕事の備品(地図やバッグ、雨具など)は全部自分で買ってもらうけどいい?
●釣り銭(1万円以上)も自分で用意してもらうけどいい?
●自転車マニアである必要はないが、仕事中のパンク修理や自転車のメカトラブルへの対応は当然現場で自力でやってもらうけど、いい?
●請負契約だから社会保険がなくて、事故っても労災ないけどいい?
●事故って稼働できなくなっても、所得の保障なんかないけどいい?
●請負契約だからボーナスも有給休暇もないけどいい?
●雇用契約(アルバイト)でもやっぱりフリーター以上派遣社員未満の給料だけどいい?
●雇用契約でもアルバイトには労働基準法通りの有給休暇なんてあげないけどいい?
●自転車に乗るイメージが強いと思うけれど、オフィスに出向くわけだから失礼にならないような接客もちゃんとできないとダメなんだけど、いい?
●指導者にならないかぎり、身につく具体的な技能は、初歩的な接客スキルと、初歩的な伝票記入のスキルと、自転車による運送能力や地理感覚という専門スキルなんだけど、それだけでいい?
●それ以外の勉強や自己修養は自分でしてもらうほかないんだけどいい?
●サラリーマンとしての適性やこらえ性、スキルは、メッセンジャーとして走るだけではまったく身に付かないんだけど、いい?
●バイトや請負契約は「就職」じゃないんだから、会社に期待や不満を勝手に抱かれても困るんだけど、いい?
●キミが辞めても会社はその後のキミの人生なんて知らないし、自分で道を拓いてもらうしかないんだけど、いい?
●雨の日も走る仕事だけどいい?
●雷が鳴っていても走る仕事だけどいい?
●梅雨のときも走る仕事だけどいい?
●台風のときも走る仕事だけどいい?
●夏の酷暑の中も走る仕事だけどいい?
●冬の極寒の中も走る仕事だけどいい?
●冬の雨は冷たくて手足が痛くなるけれどいい?
●以上、全項目について了承してもらうけれど、いい?


 メッセンジャーの面接では、あまり過去の職歴だのスキルだのをクドクドねちねち問われないのはいいところです。勤め人のように、学歴や履歴書、エントリーシートだけで門前払いされることもありません。門戸は広く開かれています。これはホントいいことです。

 ただ、せめて最低限ここに挙げたぐらいの、今後も動きようがない事実については先に説明してもらいたいものです。いや、説明してもらわなくても面接の前に自分で心の中で「はい」と答えておきたいところです。

 面接では、上記の確認事項を紙に印刷して「はい」「いいえ」の回答欄を設け、すべて「はい」に○しないと合格させない、というのでもいいですね。どれもこれも基本的な、そして大事な説明じゃないか。でもそれだと自分が不合格になってたかも。

 そうすれば1日で逃げ出したとか1週間で辞めたとか期待を裏切られ失望して辞めたとか、辞めたはいいけど結局凡百のフリーターに逆戻りだったという話も減るだろうに。
 だいたい雨がツラくて1日で辞めるって、なんじゃそりゃ?そんなん最初から分かってたことやんけ。でも実際にそういう人はいるのです。

 こういう客観的な状況を隠したまま募集をかけるのは、ホント誰のためにもなりません。これでは人の入れ替わりが激しい状況がいつまでたっても変わらない。つまりまたゼロからスタートの人が入ってきて、その人をフォーマットし直さないといけないということです。
 これでは組織や仕事のパフォーマンスの向上は見込めず、ゆえにお客さんのためにもならない。安かろう悪かろうの悪循環に陥ってしまいます。

 へ?給料が安いって?経営者がマージンを抜き取っているからというのもあるけれど、「メッセンジャーと会社」だけでなしに、もっと外まで目を向けないと。

 メッセンジャー会社が運賃をお客さんからもらえるのは、自転車が環境にやさしいからでも二酸化炭素の削減に貢献しているからでもありません。あくまで荷物を「A地点からB地点にスバヤク確実に運んでくれるから」です。お客さんは環境へのやさしさにお金を払ってくれるんではなくて、主に運送という役務に対してお金を払ってくれるわけです。

 もちろんただ運ぶだけではなく、そこにさわやかな接客だとか特定信書便の認証だとかプライバシーマークの取得だとか、さらには環境への負荷が低いといった付加価値が加わるわけですが、あくまで中核は運送という役務。

 環境にやさしいという話はたしかに当たっていることではあります。実際、オートバイではなく、自転車便にこそ仕事をお願いしたいと言ってくれる会社もあります。
 でもそれはメッセンジャーの仕事の一面しかとらえていないし、核心ではないと思います。どんなに環境にやさしくても、いかなる「カルチャー」を発信しようとも、素早く確実に荷物が届かなかったり、接客態度が悪かったりすれば、自転車便を使ってもらえるはずがありません。

 ライフスタイルだカルチャーだといっても、運送という核となる役務をシッカリ果たしてこそ成り立つものです。周りの社会から、オメグミやホドコシやキフキンを得ているわけではなく、役務に対する対価を得ているわけだから。

 環境やカルチャーうんぬんは、メッセンジャー会社自身の宣伝文句か、業界外の人による勝手な賞賛ぐらいに思っておいた方がいいかもしれません。働く本人にとっては。

 メッセンジャーは運送業。(走る本人がどう思うかは別として)

 こうとらえると、いろいろな問題が実にうまく説明できます。

 運送業の単価はおそらく年々下がる一方であり、そもそも人々がヨロコンで青天井で払ってくれるような類のコストではないわけだから、この先、景気のいい業界ではありますまい。
 つまりメッセンジャー業界の未来の姿は、バイク便業界、タクシー業界、トラック業界の姿に近づくんじゃないでしょうか。すなわち、きつい労働に低報酬、長時間労働。

 低報酬の理由は「経営者が『兵隊』を搾取している」というステレオタイプな図式だけでは説明がつきません。低報酬なのは、搾取されているからというよりも、そもそも運賃自体が安いからという理由の方が大きんじゃないでしょうか。

 ンなもんだから、経営者がけしからん、会社がけしからんと一方的に責め立てる気にもなれないのです。今僕がもう一個行っている会社では僕が経理をやっていますが、社長の給料は超激安…メッセンジャー以下だし、僕もホンのコヅカイ程度しか今はもらってません。
 ですが全体の数字を見てしまうと、会社としては固定費(特に人件費)を削りたくてタマラン、怖くてタマランというのは心情的には理解できるところです。
 資本金も上積みしたいし、借入金だって返さないといけないし、報酬払いました倒産しましたでは話にならないわけです。

 メッセンジャーの仕事は非常にいい仕事ですが(後述)、しかしその「いい仕事」に見合った「いい会社」「優秀な経営者」「運送業に有利な客観的状況」がまったく(あるいはほとんど)ない…だからメッセンジャー個々のしんどい客観的状況が生まれているという結論にいたりました。自分がなる前は、意外に稼いでいるナゾの集団だと思っていたんだけどなァ・・・。

 で、現状の人材募集は、ハッキリ言うとこうした諸々の客観的状況を隠したまま、「何も知らないフリーターをダマしてリクルートしようとしている」ようにしか見えないわけです。
 何も知らないフリーターをダマしてリクルートして安い報酬で使い捨てにする、そんなやり方で回していく事業に、果たして未来はあるのか?安い報酬、安い運賃の会社には、しょせんその程度の人材しか残らないと思うのだけど。
 「大事なのはカネではない」「カネのためだけに仕事をするわけじゃない」という考えは、現場で走るライダーのみが口にしていい言葉で、経営側の人間が言っていいことではありますまい。

 ただし、メッセンジャーは、その仕事の性質や、自転車乗りの気質ゆえに、幸か不幸か、安い報酬・安い運賃の弊害が、他の仕事よりも顕在化しにくいですね。自転車という素晴らしすぎる乗り物が、「偽装請負」のマイナス面を補って余りあるからです。

 走る方も走る方で、何も知らないフリーターから、会社に依存しない独立した職業人として生きていけるプロまで千差万別。

 請負契約の怖さを知らない。強制加入の対人対物保険も目先のカネがないもんだからなかなか掛け金を振り込もうとしない(自転車には自賠責がないのに、仕事中に人をケガさせたらどうするんだ?)。自分自身に生命保険も掛けない。
 国民年金を滞納して免除申請も延納申請もしない。確定申告しない。保険証すら持っていない…そんな一部の同僚を見ていると、オソロシクなってきます。

 ほんの数人で家族的な共同体でやっている地方のメッセンジャーならともかく、経営者と「兵隊」が完全に分離した東京では、これじゃホントただの「フリーター」じゃないか。

 同僚メッセンジャーの一人は言います。「もっとねー、ここで走っている人も勉強した方がいいと思うんですよね」…彼はまだハタチそこそこで非常に若い(けれどキャリア3年以上)のですが、すでにいろいろ気づいて次のステップに向けて影で勉強しているそうです。そうやって影で勉強するなり他の活動に精出して「メッセンジャー後」を見据えてちょっとずつ軸足を移しつつある人もそこかしこにいます。

 別な職歴豊富な同僚メッセンジャーはいいます。「オレはちがうけど、この仕事を一生の職業として取り組んでいる人もいるんだから、ずっとはできないとかいうのはベテランの人に失礼だ!」彼の言い分も至極もっともです。

 その一方、やめるにあたり、幾人かの、それこそ例の1999年の映画が公開された頃から走っているベテランから「おめでとう」「辞めて正解だよ」「勤め人の方がいいと思うよ」的なことを言われたことも付け加えておきましょう(勤め人の方がいいとは思わないが・・・)。

かくげ太「誰かが残って続けないと、状況がよくならないじゃないですか」
指導者「オレはもう長いことやってるけど、みんなには早くやりたいこと見つけてもらって、卒業してもらいたいんだよね」

指導者「辞めた後どーするの?」
かくげ太「しばらく勤め人になります」
指導者「勤め人の方がいいと思うよ」
かくげ太「でもメッセンジャーってオモシロイですよね」
指導者「オモシロイけど、ただオモシロイだけだよ」


 「先に」これらの客観的な状況を認め、自分で策を講じたうえでメッセンジャーになれば、後に述べるような素晴らしい景色が見えます(と思います)。しんどい客観的な状況さえ乗り越えられれば、もうあとはいいことづくめです。辞めるときだって「あー辞めてよかったゼ」と思わずに済みます。

 なぜいいことづくめかって?それは自転車自体がいいことづくめな特別な乗り物だからです。生きているという実感を得られやすく、感性が研ぎ澄まされ、モノをよく考えるようになる乗り物だからです。僕とてメッセンジャーになるずっと前からチャリダーだったのだから、自転車の効用は重々承知のこと。

 で、「メッセンジャー的な生き様」「メッセンジャーのライフスタイル」を貫くとは、先に挙げたしんどい客観的な状況を「乗り越えて」「納得して」あるいは「頓着しないで」(=全部「はい」に○をして)、後で挙げるいいことづくめなことを享受することであると、僕は解釈しました。

 その結果、この仕事を一生の仕事と思って主体的に取り組んだり、あるいは指導者にまで上り詰めるのならば、それは素晴らしいことです。一日で辞めたり一週間で逃げ出したり一年で退出する人が「体験入隊者」ならば、彼らは「職業軍人」です。彼らは全然オーラがちがうし、そりゃあ稼ぎだってちがうだろうよと思います。

 夜中まで現場で走って、月に40万とか50万とか稼いでいる人は実在するし、メッセンジャーの年齢的な限界も、おそらく世間一般のイメージよりも高いのではないでしょうか。日常的に走っていれば、30代、40代までは現役かと。

 「いつまでやんの?」「若いからやれるんでしょ」などと言ってくる人は多かったけれど、同じセリフをプロ野球選手とかに言いますか?言わへんやろ?
 プロ野球選手になっても二軍からあがれず、年俸1000万以下で若くして姿を消す選手も多いやろ?引退して、誰もが解説者や指導者になれるわけではないやろ?だからといってプロ野球選手に「そんな仕事、一生できる仕事じゃないからやめとけ」とか言う?

 であるから、メッセンジャーじゃない人からよく言われるように、「早くそんな仕事ヤメトケ」とか「こんな仕事、ずっと続けられる仕事ではない」という俗説にはそう簡単にハイそうですねと全面的に与するわけにはいきません。

 そもそも「ずっと続けられる仕事」って何なんだ?「ずっと続けられる仕事」「続けられない仕事」というのはそういう「仕事」が実在するわけではありますまい。究極には各々の観念上の存在にすぎないんじゃないですか?二言目にはずっと続けられるずっと続けられるっていうけどな、何なんだそれは、具体的に申してみよ。

 ほぉー、「安定した」サラリーマン(正社員)や、その究極形態であるお役所のコームインなら「ずっと続けられる仕事」なんですか?
 イジワル、イジメ、無責任、無関心、足の引っ張り合い、仕事の押し付け合い、深夜残業に休日出勤、過労、戦線離脱、心身症、鬱病、自殺…勤め人の職場に渦巻くこれらのどす黒いオーラについて弁解してみよ。

 つまり「(この仕事は、その仕事は)ずっと続けられない」とは、他ならぬオレが勝手にそう思っているだけ。アンタが勝手にそう思っているだけではないか?
 結論をだらだら先延ばしにしたり、明日のことは何も考えないというのではなく、自分のスタンスをビシっと決めてしまえば、それは「続けられる仕事」に転じるわけです。

 メッセンジャーの暗黒面についてはいったんここらで切り上げます。これら暗黒面を乗り越えれば、もうあとはいいことづくめです。

 …それではメッセンジャーの仕事はいいことづくめ、とはいかなることでしょうか。

「いいことづくめ」の中身

●全力を尽くすことの痛快さややりがいを肌で感じられる
●全力を尽くす自分のベクトルと、職務上求められる頑張りのベクトルが一致する!
●仕事をするうえでジメジメしたストレスがまるでなく、爽快感でいっぱい
●配送中にたとえヤなことがあっても、一日終わればきれいさっぱり
●「仕事に対する報酬」という関係がよくわかり、気持ちよく稼げる(カネを右から左に転がすだけの商売とはわけがちがう)
●一日一日が達成感の連続、したがって年中達成感が連続する毎日を送れる
●自転車に乗っている自分こそがヒーロー、主人公という意識になれる
●雨が降ろうが台風が来ようが雷が鳴ろうが走り続ける…こんなかっこいい仕事が他にあるか?
●半径数キロ以内ならメッセンジャーより速く現物を運ぶ手段は他にないという、替えが効かない存在であることが気持ちいい
●自転車に乗って報酬を得られるという自転車好きにはたまらない環境がある
●日中は日の光を浴び、働けばちゃんと腹が減り、夜はきちんと眠くなるという人間の身体のサイクルによく合った健康な毎日を送れる(ホワイトカラーではこうはいかないぞ)

 この1年間、請負契約がドータラコータラ、報酬がナンボだのカネがかかってしゃあないだのの話を具体的な数字まで出して散々書き連ねてきましたが、しかしそれとてメッセンジャーの仕事が主観でもって「いい仕事」であると十分認めたうえでのこと。

 これだけの「いいことづくめ」を全部兼ね備えた仕事って、そうそうないと思いますよ?

 まっとうに労働して、工賃でお金がもらえる素晴らしい仕事です。

 こんだけメッセンジャーについてああだのこうだのブーブー書き連ねながらも、同僚からは「かくげ太さんてホント仕事のとき楽しそうっスね〜」「かくげ太ほんとオマエうれしそうだなぁ〜」と言われてたのでした。そりゃあ総合的には楽しかったよ、1年間。
 メッセンジャーとしての能力が平々凡々としたまま終わるのは悔しいが、やってよかったかって?もちろん。

 でも、これからメッセンジャーをやりたいという人、ちょっと興味があるという人は、この「やってよかったです」というところだけを先に読んではいけません。「やりがい」だの「達成感」だのはオノレ一人の思い込みでしかないからです。
 「やりがい」「達成感」を期待して入ってみたら、報酬のあまりの安さに失望し、雨の日のあまりのつらさに挫折というミスマッチも、十分ありえるわけです。

 しかも客観的状況をコントロールするべきメッセンジャー会社自身が(しんどい客観的状況について黙ったままで)「やりがい」だの「達成感」だの、本来ならメッセンジャー自身が言うべき話を盗んで宣伝に使うのは、まっことおかしな話やないか。以前もこのブログで書いたが、それは仕事じゃなくてサークルの勧誘か?

 外からのイメージと過酷な実態の乖離の激しさ。それは多かれ少なかれどこの業界にもあることでしょう。そんな乖離を手っ取り早く学ぶには、なるほどメッセンジャーはとてもいい仕事です。

 それでもメッセンジャーは、その外から与えられる&期待されるイメージや外から語られるすばらしさ(特に自転車系メディア)と、現場の実態との乖離があまりにも激しすぎる。

 自転車雑誌に出てくるメッセンジャーの愉しそうな紹介記事や、求人欄に載っているそうそう簡単には得られないごく一部のエースによる「歩合制の収入例」だけを見ていたらダメです。
 あんな収入例を得られるのはホンの一部にすぎないという、求人広告のやり口の定番であることを、よくよく踏まえて読みましょう。
 自転車雑誌にしたって、メッセンジャーの暗黒面を伝える社会問題雑誌ではなく、むしろ自転車業界の広告媒体として存在するわけだから、楽しそうな切り口ばかりになってしまうのはやむをえないところかと。


 カネのために働くのではない、大事なのはカネじゃない…それはたしかに一面真実ですが、しかし真実の一面でしかありません。実際、リアルな話、カネは必要ですからね。「大事なのはカネじゃない」ではなく、「大事なのはカネ『だけ』じゃない」というのが正しいのでは?

 配達が終わって事務所に戻ったとき、あるいは街中で同僚メッセンジャーと出会ったとき、必ずお互い話に出るのが「今日何本走った?」「今日は稼げてる?」ですよ。これが現実。
 そりゃあ金持ちの道楽や、無償奉仕活動で走っているわけじゃあないんだし、こちとら生活がかかっているんだから、売上や歩合を気にするのは当たり前のことだ!

 どうせ同じ走るのなら、たとえ報酬が安くても、将来的には会社だけでなく配送員にも還元しよう、配送員の単価をアップさせようという意思が経営者にある会社がいいですね。
 あくまで利益は運送という役務の品質を高めることによって出すものであり、配送員相手に商売をする、すなわち配送員から利益を吸い上げるものではないという会社です。


 これからメッセンジャーをやろうとしている人の大半はおそらく僕よりも若いわけですが(実際うらやましいし、僕自身もっと若いときに、就職する前にやりたかった)、これらの笑えない客観的な状況をよくよく計算に入れた上で、漫然と走るんでなくして、自分なりの戦略なり展望なりをもってやってもらいたいなァと思います。

 若い頃は、どんな会社であれ、モーレツ一直線に仕事しちゃったりしがちです。そういう時期があってもいいでしょう。でもいつまでもそれだけじゃあね…。

 何も考えずに続けるのと、あえてダマされたと思ってやってみるのとでは大ちがい。

 戦略も展望もなく続けていたら「ハッ、しまった、気づいたらもう●年間も経ってしまった」ということにもなりかねないし、そうやって時の流れについて後悔を残すのは、請負契約で低報酬であることよりももっと大きな大きな問題だと思うのです。仕事自体は非常にオモシロイだけに、気づきにくいんですね。それでいて金銭的な実入りも少ないんじゃやってられませんぜ。

 反対に、自分なりの戦略なり展望なりがあれば充実した毎日を送れて、やめるときも「やってよかった」となるだろうし、どういう姿勢で仕事に臨むかは、早いうちに決めておくに越したことはありません。

 また、会社との付き合い方として、この会社が何してくれないカニしてくれないと考えても何も始まりません。それは雇われ者根性だし、会社が何もしてくれないのは今までもこれからもきっと変わらないでしょう。
 メッセンジャーをめぐるシンドイ客観的状況は変わりようがないわけだから、自分が「社長」になったつもりで、メッセンジャー会社は取引先の一つにすぎないとみなして、今どうするか、次どうするかを考えていけば、きっと心は健康でいられるはずです。それが現実的な対応です。

 特に請負契約は一般的には雇用契約よりもメッセンジャーにとって不利な契約ですが(しかも実態は「偽装請負」ですが)、メンタル的にはこちらの方がいいのです。

 会社へのロイヤルティー(忠誠心)とはまったく独立して(またはゼロでも)自分固有のモチベーションを保てるのは、時給ではなく歩合制です。

 たとえ雇用契約で守られていたとしても、自分のモチベーションを会社に依存しないことです。依存すると公務員みたく恵まれた待遇でも文句タラタラになります。

 分かりやすく言えば、自分がプロ野球選手になったつもりで!
 彼らは球団のユニフォームを着てプレイしてはいるけれど、一人一人は専門スキルをひっさげた個人事業主であり、彼らのモチベーションは会社や球団には依存しきってはおらず、自分自身からほとばしり出たものではないでしょうか。

 カネだけがモチベーションじゃないし、どの球団に移籍してもベストを尽くす。モチベーションは会社がくれるものじゃないし、実はお客さんがくれるものでもないし、最後には他の誰でもない自分自身に由来するわけです。

 仕事自体が「いい仕事」なのはまちがいないのだから、辞めるときに「あー辞めてよかった」じゃなくて、「あーやってよかった」と思えるようになれればすべてヨシです。

 数々の問題を業界内部に抱えつつも、若いうちに社会勉強としてやるなら、こんなにいい仕事はないと思いますよ?

 先にマイナス情報を想定した上で、あえて飛び込んでやってみるというのならば、きっといろいろ得られるものも多いはずです。

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 以上、メッセンジャーから一年で退出する凡メッセンジャーの始末書でしたっ。あとのことは街中のメッセンジャーをつかまえて、あるいはメッセンジャー会社に入った後ならばベテランの人をつかまえて、いろいろきいてみてください。

 特に、「メッセンジャー 自転車便 ブログ」とか「メッセンジャー 自転車便 バイト」とか「自転車 メッセンジャー 給料」などといったキーワードで検索しているそこのアナタ!検索ばっかりしてても本当のことはわからないもんです。このブログだって、一個人の見解に過ぎないわけだし。

 検索はほどほどに切り上げて、疑問があれば面接できいてみればいいのでは?ネットで検索ばっかりしてても答えは出ないし、自分にとって都合のいい情報(「メッセンジャーは稼げる」とか)を探し当てるまでネットサーフィンを延々くり返してもキリがありません。

 …なんのかんのいって、やっぱり給料が気になる?…東京都内の場合、10時間走って初心者は1万円弱、慣れてくれば1万〜1万5千(時期により異なる)と考えておけば、期待が裏切られることはないでしょう。これを超えられればラッキーぐらいに思っておいた方がいいと思います。逆にこのラインを下回るようだと…

 もちろん月に40万とか50万とか稼ぐ猛者も中にはいますが(マジで)、そのような上級レベルのメッセンジャーを引き合いに出してメッセンジャーの報酬を語るべきではありません。これを読んでいるあなたがそのレベルに到達できるかどうかは分からないわけだから。


 メッセンジャー会社の面接は、ホワイトカラーの正社員になるための就職活動に比べればハードルが低いし、考えた結果、「それでもやりたい」と思ったら、やってみればいいんじゃないですか?
 検索しまくっていつまでもウダウダ考えるのではなく、要は自分が面接を受けるか受けないか、その2つしかありません。

 ただし、この記事の冒頭に書いた内容については、すべて「はい」と心で答えてから!それさえOKなら、面接は難なく合格できるはずです。がんばってください。

 気になる具体的な売上や自分の収入、走行距離などのデータについてはこちらをご覧下さい。→「凡メッセンジャーの場合」

 なお、メッセンジャーの具体的な仕事の中身は、次のサイトが詳しいです。

 →自転車メッセンジャーの「現実」

 また、バイク便(オートバイ)について紹介した下記のサイトも参考になります。

 どの会社がどうだという話は、年と共に状況も変わるので注意が必要ですが、バイク便に必要なスキルや、報酬の概念の解説は、メッセンジャーにも役立つ話だと思います。

 →バイク便ランキング


 じゃあ・・・バイなら!


---(以下は、2008/5/28追記)---

 メッセンジャーを辞めて、もう2年が経ちます。その後職業を2回変わり、今は本当の意味での個人事業主をやっています。

 この記事を書いた後、非正規雇用や偽装請負の問題が社会的にも大きくクローズアップされるようになり、厚生労働省がバイク便や自転車便の労働者性を認定し、労災の適用を認めたり、メッセンジャーたちの組合ができたりしました。

 自転車便・バイク便の労働者性についての厚生労働省の見解(PDF)

 組合のみなさんは、メッセンジャーの報酬を一生できる仕事にふさわしい待遇に変えるべく、活動されているようです。少しずつ状況も変わりつつあるのでしょうか?報道では、経営側は組合との交渉のテーブルになかなか付こうとせず、シラを切り続けようとしているとのことですが…。

 経営側も、いつまでも組合や配送員をまともに相手にしていなかったら、会社自体が沈没してしまうんじゃないでしょうか。食品の偽装表示問題や日雇い派遣会社の経費天引き問題等に見られるように、経営者に遵法意識のない会社が壊滅的打撃を受ける事態が頻発しています。メッセンジャー会社がそうならないように祈るばかりです。

 自分たちの力での業務の改善(経営側からつけ込まれないためには必須)と、待遇アップは車の両輪。相互にいい影響を与え合って、メッセンジャーがもっと酬われるようになると、いいですね。

メッセンジャーご苦労様
仕事っていろいろありますよね。
好きな仕事ができる喜び 確かにいいです。
収入は沢山あるが過酷な労働。
でもいちいちそれに文句を言えない環境もあります。
いろいろな仕事を経験しました。どれも必ず不満があるものです。
何が自分にあってるかだけでなくどうすれば家族を養えるか! 寂しいが最後はここに来てしまいます。
収入のために休みを返上ししかし家族には白い目で見られ…
がんばらねば

2006.06.04 19:58 URL | pokopen #- [ 編集 ]

> 何が自分にあってるかだけでなくどうすれば家族を養えるか!
> 寂しいが最後はここに来てしまいます。

どうすれば家族を養えるか。自分のことだけ考えていてはダメだ。家族持ちの方からよく言われることです。

信号待ちしているときに街中で突然「その仕事ってお金になるの?」ときいてくる(一見失礼な)人たちも、「それって家族を養う責任を負える仕事なの?」という意味できいているのでしょう。まったく返す言葉もありません。

2006.06.04 20:56 URL | kakugeta #MzDNG6Lo [ 編集 ]

お疲れさま!
今度はちゃんと時間取って、かつての仲間誘ってメシ食い行こうぜ!

2006.06.05 18:13 URL | 青梅だよもん #- [ 編集 ]

>青梅だくん

おー、いいね〜同窓会やろうやろう!

いつの間にか当時のメンツを路上で見かけることはほとんどなくなっちゃったけど、みんな元気かなァ?

2006.06.05 20:03 URL | kakugeta #MzDNG6Lo [ 編集 ]

卒業おめでとう!
とにかく「事故で消えていく」でなくてほんとに良かったですね。あの世界はそういうのが結構いたので心配しておりました。
メッセンジャーという非常にこゆい経験は今後もあなたのメンタルな部分の核となって良くも悪くも影響を与えると思われます。(自分はいまだに影響大です)今後の活躍に期待しておりますー。

2006.06.11 09:13 URL | 元バイク便出戻りチャリダー #3aXRcdxk [ 編集 ]

>元バイク便出戻りチャリダーさん

実は一度でも仕事で事故ってたら、自分が加害者であれ被害者であれ、引退しようとは思っていました。ヤバイ目には何度かあいましたが、どうにか無事に卒業できました。

メンタルの部分の核・・・ほんと、これがどのように作用するかは自分でもおそろしいです。「チャリダー」もそうですが、自転車乗り気質をあまりに濃厚にしていくと、いずれ「反社会的」もしくは「脱社会的」にならざるをえなくなるからです。

なお、チャリダー論についてはフリープログラマのwindyさんが分かりやすくまとめられています。
http://www1.kcn.ne.jp/~mkomai/cycle/index.html
http://www1.kcn.ne.jp/~mkomai/cycle/essay/essay04.html

2006.06.11 23:27 URL | かくげ太 #MzDNG6Lo [ 編集 ]

はじめまして、東京のM田夫と申します。
かくげ太様、メッセンジャーお疲れ様です。

自分はこの秋からメッセンジャーになりたいと思い、「メッセンジャー 仕事」で検索し貴ブログまでたどりつきました。

とても参考になりました。ありがとうございます。
つなぎや興味本位ではなく、本職として続けたいと思っていた自分には、先月追加された記事にとても勇気付けられました。

お礼を言いたく書かせて頂きました。
ありがとうございます。

ブログで書かれていた面接で聞くべき質問には、全てYESと答えられます。
今29歳ですが、頑張りたいと思います。

2008.06.24 09:55 URL | M田夫 #v6O6VgHs [ 編集 ]

>M田夫さん

にわかメッセンジャーの記事をご覧いただき、誠に恐縮です。でも面接ではこのブログのことは言わない方がいいですね。

この記事を書いて2年経ちますが、依然としてこのページへのアクセスは毎日それなりにあるようです。僕が(1年という短い期間ではありますが)見聞したマイナス情報はここに凝縮されています。

僕は初めからずっと続けるつもりはなかったので、本職として続けるというM田夫さんに、もはや申し上げることはございません。

事故に気をつけ、道を覚え、お客さんの場所を覚え、ムチャな運転はせず、それでいて稼げるメッセンジャーに、なって下さい。健闘を祈ります!

2008.06.25 01:03 URL | かくげ太 #MzDNG6Lo [ 編集 ]












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